でんこの元ネタ
■No.77 リト=フォン=シュトゥットガルト(Reto von Stuttgart)
 ■タイプ:トリックスター
 ■誕生日:4月12日

■出身駅: ドイツ鉄道(DB) シュトゥットガルト中央駅(ドイツ)
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シュトゥットガルト(Stuttgart)はドイツ連邦共和国の都市で、
バーデン=ヴュルテンベルク州の州都でもあります。
メルセデス・ベンツで有名なダイムラーやポルシェといった自動車メーカー、
電動工具で有名なボッシュといった世界的メーカーが本社を置いており
ドイツを代表する工業都市となっています。


ドイツの鉄道は旧西ドイツ国鉄(Deutsche Bundesbahn:ドイツ連邦鉄道)と
旧東ドイツ国鉄(Deutsche Reichsbahn:ドイツ国有鉄道)が1994年(平成6年)に統合された
ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)となりました。


シュトゥットガルト中央駅(Stuttgart-Hauptbahnhof)
ドイツ連邦共和国バーデン=ヴュルテンベルク州の州都である
シュトゥットガルト市の中心駅です。

haupt(ハウプト)は「中央の」、bahn(バーン)が「鉄道」、
hof(ホフ)が「大きな建物」の意味だそうで
合わせてHauptbahnhof(ハウプトバーンホフ)で「中央駅」という意味となります。
またドイツ鉄道では駅が規模によってカテゴリー1から7までに分けられていますが、
シュトゥットガルト中央駅はドイツに21駅しか無い最上位のカテゴリー1に属しています


ドイツ連邦時代の1845年にヴュルテンベルク中央鉄道の駅として、
路線の開通と共に最初のシュトゥットガルト駅が開業をしています。

鉄道の交通量増加によって1860年代には駅の改修が行われた様子ですが、
さらに次々と鉄道路線が乗り入れ20世紀初頭には交通量のキャパシティは限界に達します。
ヴュルテンベルク州立鉄道が現在の位置に新しい中央駅の建設を計画。
ドイツが共和制となり鉄道もドイツ国営鉄道となった1922年10月に
現在のシュトゥットガルト中央駅が開業
しました。
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こちらが駅舎の外観です。この場所での駅の開業は1922年(大正11年)ですが、
駅舎が全て完成したのは1928年(昭和3年)となります。
建築家パウル・ボーナツ(Paul Bonatz)の設計による駅舎は
新しいキュービズムの様式で作られた重量感のある巨大な建物となっています。
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この駅舎でひときわ目を引くのがこちらのステーションタワーです。
高さ56mのタワーはシュツットガルトのランドマークであり、
駅周辺にこのタワーより高い建物はありません。

そしてタワーの頂点にはメルセデスベンツのロゴマークである
巨大なスリーポインテッド・スターが回転をしています。
これは1952年(昭和27年)に取り付けられたもので、
広告収入は大戦後の駅再建の費用に充てられたそうです。
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駅は東西に広がる駅舎の北側に、頭端式に8つの島式ホームが並んでおり
合計で16線のホームが横一列に並んでいます。
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こちらはホームを俯瞰で見たものです。
シュツットガルトという都市は東西と南側の三方を山に囲まれた盆地なので
鉄道は全て開けた北側からシュツットガルトへと入ってきます。
新幹線にあたるICE、特急にあたるIC、
そして普通列車のホームがが横一列に並ぶ姿は圧巻です。
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またシュツットガルトではドイツ鉄道の近郊をつなぐ普通電車網として
Sバーン(S-Bahn Stuttgart)という都市近郊鉄道が整備されており、
1978年(昭和53年)の中央駅地下線開通によってまず3路線が開業しています。

その後Sバーンは順次延伸や新規開業がされており、
現在では7系統がシュツットガルト中央駅へと乗り入れ
総延長距離は215 kmとなっています。

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そしてこちらはシュツットガルトのシュタッドバーン(Stadtbahn)のホームです。
元々は1868年(明治元年)に起源を持つシュツットガルトの路面電車は
近代化の要望によって1966年(昭和41年)には
メーリンゲン(Möhringen)━ファイインゲン(Vaihingen)間が地下化。
以後路線の地下化や狭軌だった市電の標準軌化がされてライトレール化が行われ
シュタッドバーン網が構築されていきます。


尚、現在シュツットガルト中央駅では「Stuttgart 21」という
駅と周辺の大改修プロジェクトが行われています。
これは南北に線路が走る頭端駅の終着駅である中央駅を、
線路を付け替えて東西に列車が通過できる構造へと改修することで利便性を高めるという工事です。
しかし2010年(平成22年)に始まった工事は遅々として進んでおらず、
運用開始は今のところ2025年(令和7年)と予定されていますが
期間内に完工するのは難しいというのがもっぱらの見方です。


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こちらはJR西日本の北陸本線福井駅西口の光景です。
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西口広場には福井鉄道の路面電車が乗り入れており、
広場の西側にはご覧の福井駅停留場が設けられています。

駅メモで2019年(令和元年)11月に行われた
「でんこと全国各地の駅におでかけしようキャンペーン~アンコール~」では
福井駅停留場がチェックポイントとして設定
されており、
駅メモのでんこであるリトのゆかりの駅とされています。



■モデル車両: 福井鉄道 F10形電車 RETRAM(レトラム)
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レトラムは元々は坂道の多いシュトゥットガルト向けの車両として
ドイツのエスリンゲン機械製造所(Maschinenfabrik Esslingen)が製造をした車両です。

シュツットガルトの路面電車は
その名もシュトゥットガルト路面電車(Stuttgarter Straßenbahnen AG)が運行しており、
SSBと略されます。
また車両は4本の車軸を有する路面電車(Gelenktriebwagen 4-achsig)であり、
この連接式路面電車はSSB GT4と呼ばれています。
日本風に記すとシュトゥットガルト路面電車GT4形電車、といったところでしょうか。


SSB DT4の最初の編成は1959年(昭和34年)に営業運転を開始しており、
1965年(昭和40年)までに350編成が投入されています。
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【上写真:シュツットガルトを走るSSB DT4】
シュツットガルトの路面電車では終点にループ線を設けており、
電車はループを回って方向転換をします。
その為運転台はパンタグラフのある前部の車両にのみ設けられていて、
また乗降の扉も片側にのみ作られています。

シュトゥットガルトの路面電車はその路線網の殆どを1000mm軌間の
いわゆるメーターゲージで作られていたので、
当然ながらSSB DT4電車も1000mm軌間で作られていました。

しかしシュツットガルトの路面電車は
1989年(平成元年)からの専用軌道化および標準軌(1435mm)への改軌が行われ
シュタッドバーンとしてライトレール化
が成されます。
メーターゲージで車体の小さいSSB DT4形はその輸送力不足もあいまって
徐々に大型車両のDT8形と入れ替わっていきます。

こうして老朽化も進んだSSB DT4形は2007年(平成19年)に全車両が引退。
シュツットガルトの街から姿を消し、一部電車は他の都市へと譲渡されていきました。


日本の高知県の路面電車を運行する土佐電気鉄道では、
1989年(平成元年)に開業85周年を迎えた記念事業として
「世界の路面電車を自社線で走らせる」事を企画
します。
その第一弾として輸入されたのが西ドイツ(当時)のSSB DT4形でした。

終点が折り返しとなっている土佐電ではシュツットガルトを走っていた状態、
片側運転台で片側乗降扉では運行できない事から
1964年(昭和39年)製の714と1965年(昭和40年)製の735の
それぞれ運転台側の車両を組み合わせて一つのユニットに組み直し
ています。
この時に軌間も1000mmから土佐電の1067mmへと直されています。

こうしてSSB DT4電車は土佐電気鉄道735形電車として
1990年(平成2年)から運行を開始したものの、
市民には日本の車両のアンパンマン電車の方が人気という皮肉な結果となります。
独特な構造から故障も多く、また土佐電で新型車両が導入されていった事もあって
735形は2005年(平成17年)を最後に車庫で休車状態となっていました。


そして福井県の福井鉄道が観光資源としてのイベント車両として
土佐電で眠っている735形に着目。
2013年(平成25年)に福井県の予算で購入されて整備が行われ、
車両の形式名がF10形へと改められています。
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【上写真:福井鉄道F1000形「FUKURAM」 】
併せてこのシュツットガルト出身の車両の愛称も2014年(平成26年)2月下旬より市民に公募。
福井鉄道が導入を進めていた次世代型低床車両「FUKURAM(フクラム)」とレトロ(retro)を組み合わせた
「RETRAM(レトラム)」の愛称が付けられています。

レトラムの福井鉄道での営業運転開始は2014年(平成26年)4月12日で、
福井駅前━田原町間の運行が福井鉄道でのスタートでした。
駅メモのでんこであるリト=フォン=シュトゥットガルトの誕生日が4月12日に設定されていますが、
これはレトラムの福井鉄道での運行開始日が元ネタと考えて良い
でしょう。

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では改めて福井鉄道 F10形電車 RETRAM(レトラム)について見て行きたいと思います。

まずは福井駅停留場から出発をしていくレトラムの光景です。
【上動画はクリックで再生できます】
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こちらはレトラムの前面部の様子です。
リトの服のお腹の飾りと前照灯を並べて比較して見ると
モチーフにしているのがよく分かります。
車体のSSBのロゴはシュトゥットガルト路面電車(Stuttgarter Straßenbahnen AG)のものです。
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前面部の脇に描かれているドイツ国旗はシュツットガルトから土佐電気鉄道へと
譲渡された際に描かれたものと思われます。
土佐電時代の国旗と比べると若干大きくなっていますが、
これは福井鉄道が譲り受けた際に書き直されたものと思われます。
また、リトの頭のリボンがドイツ国旗カラーなのはこの国旗がモチーフと思われます。
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車体に比べて大きなパンタグラフは下の根元が太くなっているタイプです。
キャラと比べると忠実にモチーフにしているのが分かります。
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車内はご覧の様にクロスシート座席となっています。
ドイツ時代は片面にしか扉の無い構造でしたので、
扉のある側が一人用、窓側が二人掛けのシートとなっています。
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シートは転換式などでは無く固定式となっているので
ご覧の通り可動はしない構造となっています。
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そして運転台のある車端部のみ、
運転席の真後ろにロングシートが置かれています。
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車両最前列の右側にも乗降扉があり、
運転台を入口を仕切るついたて状の扉があります。
先端が細くなっている車両の運転席はご覧のように
こじんまりとしたスペースとなっています。
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「乗務員用出入口」と書かれた車両前部の扉の脇のボタンです。
「Aussteigen Bitte Knopf drücken」(終了ボタンを押して下さい)とありますので
扉の開閉の手動ボタンなのでしょうか。
ボタンの上に書かれた「Ausgang in der Mitte」(途中で終了)
ちょっと何を指すのか分かりません。
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運転席後部の壁には車両の番号が表示されており、
そのまわりには車両の来歴も合わせて書かれていました。
赤いプレートのドイツ語は「bitte hinten aussteigen(後ろから降車して下さい)」
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車内の案内サインです。
アイスクリームのマークが飲食禁止、ローラースケート禁止などは見れば分かります。
椅子のプラスのマークはどうやら病院の意味の様子で、
日本でいう優先座席の対象者が来たら席を譲りましょうという意味の様です。
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こちらの車内表示は「Schwarzfahrer」と書かれていますが、
Schwarz(シュワルツ:黒)fahren(ファーレン:乗車)で「黒い乗客」となり
無賃乗車を意味する言葉です。
欧州の列車は改札が無い代わりに車内検札が巡っており、
正規の切符が無いと問答無用で高額の罰金を徴収されます。
その為どの列車でも車内でこうした啓発広告を見かけます
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上を見ると手すりにつり革が下がっています。
日本の様に取っ手が無く、革がループしているだけの文字通りのつり革です。
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こちらはレトラムがドイツ時代に走っていたシュタッドバーンの路線図ですが
「Tarifzonen-Einteilung」と書かれています。
料金ゾーン(Tarifzonen)分類(Einteilung)ですのでどうやらシュタッドバーンの料金表の様です。
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車内にはもう一種類、こちらの路線図もあります。
これはドイツ鉄道(DB)のものですので、接続駅からの乗り換え案内の為のものでしょう。
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車両中央部の連結部付近には座席は無く、
点対称に乗降扉が配置されています。
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乗降口にはご覧のステップが設けられていますが、
これは福井鉄道に譲渡された後に設置されたものだそうです。
走行時には立てて収納する為、かんぬきの留め金がついています。
乗降時にはアテンダント(車掌)が手動でかんぬきを外してステップを降ろします。
発車前にはステップにつけられたワイヤーを手繰って収めかんぬきを掛ける必要があり、
はたから見ていても車掌はなかなかの手間だと思いました。
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扉の横にはご覧の行き先方向幕がありますが、
表示を変える際には車掌がハンドルを挿して手動で回転させていました。

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福井鉄道に譲渡される前には土佐電気鉄道で10年近く休車状態だったレトラム。
元々車両自体も50年以上前に製造されたものであるだけに、
福井鉄道での運行当初は故障が頻発していたそうです。

営業運転開始直前の2014年(平成26年)3月29日にはレトラムの披露式が行われましたが、
肝心のレトラムは配電設備の不具合で車庫を出て数十メートルで故障による停止。
披露式の会場までたどり着けませんでした
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営業運転が開始された4月12日以降も
空気調整弁の劣化が原因でブレーキが解除できなかったり
ドアが開きにくくなったりするトラブルが続発。
春季運行を当初の予定よりも2週間早く打ち切る事を余儀なくされました。

国産では無い古い外国製車両の為、部品の調達や整備などでかなり苦戦を強いられた様子で、
リトの足に絆創膏がいくつも貼られているのは度重なる故障を表現していると考えられています。

なお近年ではさすがに日本の鉄道会社だけに、
整備のノウハウを得て運休も無く安定した運行が可能となっている様です。

【写真撮影:2019年10月】