でんこの元ネタ
■No.102 八戸ましろ(Hachinohe Mashiro)
 ■タイプ:トリックスター
 ■誕生日:10月19日


駅メモのでんこである「八戸ましろ」についての記事の続きです。
後半はモチーフとなった列車の紹介部分となります。

その1(由来駅紹介部分)はこちら



■モデル車両: JR東日本キハ110系気動車700番台「TOHOKU EMOTION」
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TOHOKU EMOTIONは「新しい東北を発見・体験」をコンセプトとし、
列車全体を「移動するレストラン」として「新しい東北を感じられるデザイン」で
2013年(平成25年)10月19日より運行を開始した観光列車です。
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このTOHOKU EMOTIONをモチーフとする駅メモのでんこの
八戸ましろは誕生日が10月19日に設定されていますが、
これはTOHOKU EMOTIONの運行開始日が元と見て良いでしょう。
衣装も明らかにコックコートをモチーフにしたデザインとなっていて
「レストラン列車」であるTOHOKU EMOTIONが由来である事を感じさせます。

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【上写真:キハ110系気動車(上)キハ110形(下)キハ111形・112形】
TOHOKU EMOTIONの元となっている車両はJR東日本が1990年(平成2年)から投入した
キハ110系気動車で、主に東北地方の非電化路線でよく目にする車両です。
このキハ110系には両運転台構造のキハ110形と
片運転台構造のキハ111・112形の2両編成とがありますが
TOHOKU EMOTIONではその両方の車両が使われて3両編成となっています。

既存の気動車を郡山車両センターで改造工事を行い、
2013年(平成25年)に3両がジョイフルトレインへと生まれ変わりました。
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TOHOKU EMOTIONへの改造日は2013年(平成25年)9月26日となっっています。
観光列車となったことで改番がされおり、新たにキハ110系700番台として番号が附番されています。
同じキハ110系では小海線の観光列車である「HIGH RAIL 1375」が710番台を附番されており、
700番台はこの2編成のみとなっています。
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TOHOKU EMOTIONの外観のデザインは「デザイン、食、アート」をコンセプトとしており、
列車自体をキャンバスに見立てた白(    をベースとしています。
奥行きを感じさせる手書き風な煉瓦調を主としたデザインでまとめられ
ラッピングシートで車体全体に施工されています。
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また屋根上の機器類まで白で塗り直されており
色彩による一体感を持たせるこだわりの屋根上塗色となっています。
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八戸ましろのコックコートの側面と裏地が煉瓦模様となっているのは
この車体ラッピングの模様が元であることは言うまでも無いでしょう。
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車両のエクステリア(外観)デザインは奥山清行氏の手によるものです。
奥山氏は山形出身の世界的なインダストリアルデザイナーで、
フェラーリやポルシェのデザインを手がけた事でも知られる人物です。

日本の鉄道でも数多くのデザインをしており、
駅メモラーで分かりやすいところでは新幹線E6系「こまち」、新幹線E3系「とれいゆつばさ」、
クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」といったところも氏のデザイン
となります。

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TOHOKU EMOTIONでは乗降時には基本的に2号車の乗降扉のみが使用されます。
入口にはひさし状のエントランスキャノピが設けられており
両側にはランタンを下げホームに赤じゅうたんを敷くことで
あたかも市中の高級レストランに入る雰囲気を演出しています。
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八戸ましろのコック帽には車両前面の前照灯をモチーフとしたかざりがあり、
並べてみると同じ形であることが分かります。
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そして八戸ましろのコート裾には大漁旗のピンズがつけられています。
TOHOKU EMOTIONは八戸から久慈までの八戸線を走りますが
県境をまたぎ岩手県に入った最初の町が洋野町という町となります。
この洋野町ではTOHOKU EMOTIONの乗客をもてなす為に
列車通過時に大漁旗や手を振るという「洋野エモーション」という活動が行われています。
大漁旗のピンズはこの洋野エモーションがモチーフだと思われます。



【上動画はクリックで再生します。】
こちらはTOHOKU EMOTIONが八戸駅へと入線する直前の通過の映像です。
それでは以下で編成の各車両について見てみたいと思います。


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八戸方の先頭車両となる1号車のキハ111-701です。
キ(気動車動力車)ハ(普通車)となりエンジンを搭載した普通車両の意味となります。
実際の内部は4人1部屋のコンパートメント7室を持つコンパートメント車両となります。

元は1991年(平成3年)3月に作られ盛岡客車区に配属されたキハ111-2という車両で、
キハ110系の2両編成片運転台の車両のキハ111形となります。
主に釜石線の快速(2002年以前は急行)として運用されており、
TOHOKU EMOTIONとなる2013年(平成25年)9月まで釜石線の運用に就いていました。
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元々急行列車用として作られたキハ110系0番台は前面部のスカートが
パイプスカートとなっていました。TOHOKU EMOTIONの1号車と2号車は
この0番台が転用されている為ご覧の通り足元がパイプスカートとなっています。
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運行時は2号車八戸方の乗降扉から乗る事となり、
すぐ左手の貫通路を通って1号車へと入る事となります。
貫通路付近の1号車久慈方車端は車内準備用のカウンターがあり
運行時は給仕が待機する姿が見られる場所です。
カウンター脇にはモニターが並んて環境映像が流れています。
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1号車はTOHOKU EMOTIONへの改造時に一旦既存の車内トイレが撤去されていますが
2016年(平成28年)1月にトイレが増設されて久慈方の連結部前山側に設けられています。
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1号車の通路は西側に寄せて作られています。
これはTOHOKU EMOTIONの走る八戸線では西側が山側、
東側が景色の良い太平洋の見える海側となるからでしょう。
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通路を奥に進んだ八戸方の車端部付近です。
運転台の後部となり乗降扉がありますが通常時は扉は旅客使用されていません。
車内給仕の使うワゴンが置かれており運行時には準備スペースとして
活用がされている様子でした。
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1号車コンパートメント座席の入口を内と外から。
4人席で1室となり7部屋あるので1号車は計28名の定員となります。
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個室と通路で物のやり取りに使うのであろう小窓。
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反対側の壁はクロークが設けられていて荷物を置くほか
冬場は上着などが掛けられます。
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コンパートメント座席(個室)の中の様子です。
テーブルの天板はキッチンなどでよく使われる人造大理石製で
車両に合わせて作られた特注品でした。
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テーブルの天板下には引き出しが各座席にあり、
ご覧の通り開閉が可能でした。
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座席は青の革張りで、壁には青森の「こぎん刺し」のクッションが。
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TOHOKU EMOTIONでは通路や座席の床のじゅうたんもこぎん刺しでした。
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個室の通路側の壁は鏡張りとなっています。これは個室内を広く見せるのと、
沿線の風景を写りこませる演出を狙ったのでしょうか。
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こちらが座席から見た車窓の様子です。
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窓のロールカーテンはご覧の通りストライプ柄となっています。


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三両編成の中間車両となる2号車のキクシ112-701です。
キク(気動車編成での付随車運転台有り)シ(食堂車)となり、
気動車編成での動力が無い食堂車車両という意味となります。
「キクシ」の形式記号は国鉄時代を含めてもこの車両が初なのだそうです。

ちなみにこの2号車にもディーゼルエンジンは搭載されており
運行中にも使用されてはいるのですが、用途はキッチンなどのサービス電源発電用としてであり
あくまで発電機用であって走行には使用されてはいないのだそうです。

こちらの車両も元は盛岡客車区に配置されていたキハ112-2という車両で
1号車の車両と同年の1991年(平成3年)3月に作られ、同じ編成で釜石線を走っていました。
2013年(平成25年)に1号車と共にTOHOKU EMOTIONに改造されて現在に至っています。
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この2号車は「ライブキッチン車両」となり、オープンキッチンとバックキッチン、
そしてバーカウンターがある車両となっています。
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まずは2号車の八戸方乗降扉付近の様子です。
TOHOKU EMOTIONの乗客がまず最初に目にするのがこの場所となります。
列車に乗った乗客はギャルソンの案内によって左手八戸方の1号車と
右手の久慈方の3号車の座席へと導かれます。
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八戸方はすぐ連結部の貫通路で、通路左右は業務用室となっています。
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2号車はキッチンやバーが山側に作られており、
乗客の通る通路は見晴らしの良い海側へ設けられています。
久慈方へと向かうとまずあるのがこちらの5mのバーカウンターです。
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バーカウンターの先にあるこちらはオープンキッチンで
調理カウンターと通路がガラスパーテションとなっていて
実際に調理の様子を見る事ができる仕掛けとなっています。
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久慈方の車端近くはバックキッチンとなっており通路部分も通常の壁となっています。
壁にはイラスト化された東北の名所案内地図が。

ちなみに余談ですが、駅メモの八戸ましろはゲーム中のセリフで「フランベ」と言っていましたが
TOHOKU EMOTIONではIHクッキングヒーターが使われいたのでキッチンで炎は出ません
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2号車久慈方の乗降デッキ付近。
片運転台車両なので運転台は残っている様子ですが、
ジョイフルトレインの中間車両となったので当面運転に使われることは無さそうです。
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久慈方の貫通路の運転台と反対側の乗務員スペースは
キッチンパントリーとなって食品や什器が置かれているそうです。
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振り返ると運転台の真後ろにはご覧の洗面台が。
キッチンがあり配管のしやすい2号車側に作ったのでしょうが、
使わないとはいえ運転台の真後ろにあるのは初めて見ました。


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こちらは久慈方の先頭車両である3号車のキハ110-701です。
キ(気動車動力車)ハ(普通車)のこの車両はオープンダイニングスペースの車両で
2人掛けのテーブルが海側7卓、山側3卓の計10卓が置かれており
定員20名の車両となっています。

この車両は元はキハ110-105という車両で、両運転台のキハ110形となります。
1991年(平成3年)6月製造の車両は長野の小海線営業所に配置されていたもので、
小海線で運用された後2013年(平成25年)9月に改造されてジョイフルトレインとなりました。
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車内客室の様子です。2号車のライブキッチン車両の通路を抜けて
貫通扉を抜けた先がこちらの3号車のオープンダイニングスペースとなります。
海側には四角の2人掛けテーブル2卓を3セット(計6卓)、
山側には三角形の2人掛けテーブルを4卓配置し計20名の定員となっています。
また、この車両のウォールライトは久慈の琥珀をイメージしたデザインとなっています。
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久慈方には室内扉があり、運転台後方の乗降デッキが広く取られています。
改造前のキハ110形もトイレは運転台後方にありましたが、
TOHOKU EMOTIONとなってトイレは洋式へと改造され、円弧式扉を備えた
バリアフリー対応大型トイレへとリニューアルされています。
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客室へと戻り久慈方から見た車内。
この車両のテーブルも人造大理石の天板に引き出しがある構造で
コンパートメント車両のテーブルと基本的な造りは同じです。
海側の四角いテーブルは2卓で4人が掛けることも可能で
2人連れにも4人連れにも対応できる様になっています。


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ちなみにこちらが2021年(令和3年)7月乗車時に供応されたメニューです。
TOHOKU EMOTIONでは担当シェフは半年交代、メニューは3か月ごとに変更となっており
再び乗車しても飽きない仕掛けとなっています。
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駅メモラーとしてはTOHOKU EMOTIONで料理を食べると
当然ながらこう見える訳で。

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TOHOKU EMOTIONの切符は旅行商品(パッケージツアー)として発売する為、
その運行は団体専用列車扱いとなります。また「走るレストラン」の人気は高く
予約は埋まりがちである為、早めの手配をしないと満席になる事も多い列車です。
ですので当日に切符を購入して乗車ということはできず、
概ね一ヶ月前程度旅行計画を立てて旅行商品を買う、という事が乗車には必要となります。

また例外はあるものの乗車にはおとな1名をふくむ2名以上での事前予約が必要であり、
いわゆる「おひとり様」にはなかなか敷居が高い列車となっています。


ですがせっかくでんこになったのですから
駅メモラーとしては一度は乗車にチャレンジしたい列車ではあります。

では。

【写真撮影:2021年7月】